100人いれば100通りの働き方
働き方改革で有名なサイボウズという会社の原型を作ってきた、同社副社長の山田理氏が書いた【最軽量のマネジメント】という本を読み、非常に共感する部分が多かったので、少しだけ紹介させていただきます。
マネージャーだけではなく社長が読むべき内容
まず、個人的な見解として非常に良本です。
今までのマネジャーの概念に一石を投じ、ブラック時代を脱して働き方改革に取り組みながらも順調に業績を拡大しているサイボウズの変遷が具体的な事例を元に書かれています。
本のタイトル【最軽量のマネジメント】の通り基本的にはマネージャー向けの本です。
しかし、内容を読み進めていくと、会社自体の制度的改革や文化の醸成が必要になってくるシーンも多くあるので、社長も一緒に読むべき本だと思います。
おそらく、この本をマネージャーだけが読んだ場合
結局自分だけが変わろうとしても意味がない!
と思ってしまいます。
これは持論ですが、本を読む目的は『たとえ小さなことであっても、実績に活かすこと』だと思っています。
なので、本を読んでも『これは自分にはできない』と諦めてしまう状態は、非常に勿体無いです。
本を購入する費用も時間も無駄になってしまいます。
【読むこと】自体を目的化せずに、しっかり内容を自分に取り入れようとすると実践が一番です。
この本に関しては、社長や自分よりも上の役職者にも読んでもらった方が良いでしょう。
本に対してどうしても抵抗がある方は、下記の動画を参考にしていただくと幸いです。⬇️
長い動画なので、お時間のあるときに見ていただけると嬉しいです。
【マネージャー】に抱くイメージ
マネージャーには、どのようなイメージを持つでしょうか?
一般的に、【会社のマネージャー】をイメージすると下記のようなイメージを持つのではないでしょうか?
- 部下の管理をする
- 偉い人
- 実績を積んで昇進していった人
- 何でも完璧にできる人(できるべきである人)
僕もそう思っていましたが、本書の中には印象的な文言がありました。
完璧を求めると、自分も苦しくなるし、周りも苦しむことになります。
出典:最軽量のマネジメント 山田理 サイボウズ式ブックス
『マネージャーは偉い』という間違った認識があるから、『どうして俺の言うことが聞けないんだ』といういらだちが生まれるのです。
出典:最軽量のマネジメント 山田理 サイボウズ式ブックス
世の中の【マネージャー】という概念に対して、果たしてそれは本当に正しいのか、そこを疑った方が【マネージャー】としての役割を全うできるのではないか、という考え方です。
ここで、僕が感じたことです。
上記で【会社のマネージャー】という表現をしたのは、世の中には【会社のマネージャー】以外の【マネージャー】があらゆる場面で活躍しているからです。
たとえば、【部活のマネージャー】や【芸能人のマネージャー】を想像してみましょう。
【部活のマネージャー】は、スケジュール管理はもちろんですが、部員のコミュニケーションや体調管理など、選手がより活躍できるためのサポートを行います。
【芸能人のマネージャー】は、タレントを売り込み仕事を取ってきたり、スケジュール管理や身の回りの業務を行うことによって、タレントがより活躍できるためのサポートを行います。
両者ともに、自分がすごい運動能力があるわけでもないし、タレントのような演技力や歌唱力があるわけではありませんが、自分がマネジメントを担当する人がより活躍できるためのサポートを行うという点で共通しています。
それが、【会社のマネージャー】となった途端、急に偉そうなイメージになったり、完璧でなくてはならない存在であったり、随分と印象が変わります。
このように、
マネージャーは『地位』ではなく『役割である』
出典:最軽量のマネジメント 山田理 サイボウズ式ブックス
というところから、本書は始まります。
ブラックでもホワイトでもなく、【クリアな企業】へ
本書では、ブラック企業が悪い、ホワイト企業が良いというどちらの立場にも立っていません。
サイボウズはホワイト企業と言われることがあるが、別にホワイト企業を目指しているわけではないようです。
ブラック企業と言われる会社であっても、もしかしたらやりがいとか市場の成長性とか、短期的に定量的には測りきれない報酬があるかもしれません。
ちゃんと情報が開示されているのであれば、選ぶのはその人次第です。
出典:最軽量のマネジメント 山田理 サイボウズ式ブックス
という本文中の言葉にも現れているように、大切なのは、情報がしっかりと開示されている透明性であるという立ち位置です。
確かに、サイボウズという会社をネットで調べれば、多くのメディア掲載にされていますし、オリジナルのメディアである【サイボウズ式】というサイトでかなりの情報が開示されています。
正直、『え、外部に向けてそこまで書くか?』という内容まで書いてあります。
そして、外部に対する透明性だけではなくて、どちらかというと社内での情報共有をかなり徹底しているようです。
それが、最軽量のマネジメントに繋がるようです。
情報共有の第一歩【雑談(ザツダン)】
サイボウズがとてもブラックな状態で、離職率が28%となっていた時代に危機感を感じ、山田氏が立て直そうとして取り組んだのが【雑談(ザツダン)】でした。
文字通り、業務の報告ではなく、話す内容は特に決めずに1対1で話をする機会のようです。
その【雑談(ザツダン)】の中で、次のような発見があったそうです。
発見1:部下の不満は見えないから怖い、見えるようにすれば怖くなくなる
発見2:チームが『おかしいとき』って『情報が共有されていないとき』
発見3:つまり『情報の徹底公開』こそがマネージャーの仕事を激減させる
出典:最軽量のマネジメント 山田理 サイボウズ式ブックス
ザツダンというのは、業務時間の中で30分ほどあらかじめ時間を作って、話をするという場です。
本書では、結果的にはかなり効果的に働き、上記のような発見を得られたとも書いてありますが、本質的には情報を透明化するというところにありそうです。
それぞれが、各々愚痴を抱え込むのではなく、情報を吸い上げる場を作るということです。
何故なら、そもそも愚痴として抱え込まれては問題を発見することもできず、解決することはできないからです。
そのために、ザツダンは非常に効果的ということです。
個人的にも、この取り組みは素晴らしいと思いますが、だからと言って『本に書いてある通りうちの会社でもザツダンを取り入れて、各マネージャーには今月中に全員と雑談をすることをルールにしよう!』といのはお門違いです。
現場のことを一番知っているのは経営陣よりもマネージャーなので、マネージャーの裁量で巻き込みやすいところから始めて行くのがいいかと思います。
また、この時、変に形式ばったりマネージャーが足を組んで高圧的な姿勢で話を聞くということもしない方がいいでしょう。
いつもの【面談】のクセで、せっかくのザツダンでマウントを取りに行っては全くの無意味です。
本書の中でもそれに近い失敗談が掲載されていました。
最軽量のマネジメントを実現する【情報の徹底公開】
本書では、性悪説を前提としてきたマネジメント方法が、マネージャーの負担を増加させると説明しています。
マネージャーは、『この報告や申請に嘘や誤りはないか?』という膨大なチェック業務を抱えています。
そのような負担は実は無駄なことであり、それが本当にマネージャーのするべき仕事なのか?という疑問を持っています。
そこで、サイボウズが取り組んだことが『情報の徹底公開』ということです。
同社では、出張の経費申請等も詳細に全社員に公開されているようです。
業務で使用する交通手段や宿泊手段なので、当然全社員に公開されていても何も問題ないことだと思いますが、多くの会社では上司や経理しか見られない状態になっています。
あえて『怖い言い方』をすれば、自分が使った経費は全社員に監視されている、という状態です。
出典:最軽量のマネジメント 山田理 サイボウズ式ブックス
と、文中にも書いてある通り、全社員に公開されているということは、全社員に監視されている状態とも言えます。
確かに、僕の前職では出張が多かったのですが、『ラブホの領収書って申請できるかな?』と言う会話もありました。
全員に監視されているということは、嘘をつくことはもちろん『これってイケるかな?』と言うグレーゾーンを避けるようになります。
特別な罰則を規定して厳罰化するよりもよっぽど効果的に、虚偽の申請をする心理的ハードルを高める方法です。
そのような小さな情報公開に留まらず、同社では重要な意思決定が行われる経営会議の内容も徹底的に公開するようにし、社員がアクセスできる環境を整えているようです。
よくある会社の構造では、経営会議での意思決定→部長会議で共有→各部で情報共有のように、マネージャー任せの伝言ゲームが始まりますが、そのような無駄をなくすことによって、マネージャーの負担を減らせると言うことです。
公明正大を前提とした【説明責任】と【質問責任】
本書では、マネージャーには【説明責任】があるが、同等にメンバーにも【質問責任】があると表現しています。
簡単に言うと、『わからないことがあれば自分で質問しなさい』と言う内容の責任なのですが、これはマネージャーとメンバーの関係を一方的な上下関係ではなくあくまでも、メンバーも1社員、1メンバーとして自立していると言う認識が前提になります。
おかしいと思うならもっと『広く』公開すればいい。上司にだけ公開するから、密室になって、握りつぶされたりするのかもしれない。
それなら、多くの人にも公開して、その上で上司に答えてもらう場をつくっていく。会社が説明責任から逃げられない状況をつくっていくのは、すごく大事なことです。
出典:最軽量のマネジメント 山田理 サイボウズ式ブックス
上記にもある通り、【情報の徹底公開】を大切にしている同社では、このような質疑や応答に関しても、公の場で行うようにしているようです。
確かに、『質問しなさい』と言われたからといって上司に質問したとしても、曖昧にされたり『そんなもん自分で考えろ!』と言われてもみ消されるようになっていると、質問することすらできません。
それは、会社の文化的な問題にも起因します。
【質問責任】を課す以上は、【説明責任】を全うする。
そのような考えが根底にあるようです。
しかも、そのような質疑がグループウェアと言う社内のプラットフォームに溜まっていくと、同じような疑問を持つ人が後から現れても、わざわざ回答する必要はなく検索してもらえます。
そのようにして、【質問責任】を全うしてもらう文化とツールを作り、最軽量のマネジメントを実現しているのです。
本記事だけでは紹介仕切れないくらい、目から鱗の内容
本書を読めば、次の日には
- ザツダンを1人とやってみる
- 自分から率先して日報で情報を発信してみる
- メンバーからの質問に徹底して答える
- その内容を他の社員に向けても発信する
と言う小さな取り組みに繋げることができそうです。
しかし、個人の力では限界があります。
だからこそ、メンバーの力を借りるのはもちろんですが、会社の制度や文化が追いつかない場面に遭遇すると思います。
そのため、冒頭でも書いているように一番巻き込むべき存在は、社長です。
また、本記事内で紹介している内容は、本書のほんの1部分でしかなく、全内容を網羅できているわけではないので、ぜひ少しでも内容に興味を持った方はご自身で一読してみることをおすすめします。
多くのマネージャーが抱えている悩みに対して鋭い角度で疑問を投げかけ、事例をもとに様々な施策が書かれているので必ず参考になるはずです。
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ではまた。
ここまで記事を読んでいただきありがとうございます。
このブログのコンセプトは『働くって、本当は楽しい』を配信することです。
主に過去なかなか実績を出せずに悩んでいた自分に対して、当時知っておきたかった考え方や手法を伝えるものです。
仕事は本質的には楽しいことだと思うのですが、少し歯車が合わなくなるだけでとても辛いものへと変化します。
少しでも、働く楽しさを感じていただくためにも更新していきますので、これからもワキログをよろしくお願いします!
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