同じ家なのに、なぜ見積が違う?|工務店の利益を静かに削る「積算のばらつき」

同じ家なのに見積が違う|2つの家の模型と見積書の束を虫眼鏡で見比べるビジネスパーソン 工務店の方へ
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ワキログ
ワキログ

お疲れ様です。ワキログです。

今回は、工務店の経営者の方に向けたお話です。

「同じような家を建てているのに、担当者によって見積金額が違う」。

工務店さんの支援をしていると、この悩みに本当によく出会います。

今回は、見積のばらつきがなぜ起きるのか、そしてそれが会社の利益をどう削っているのかを、僕なりに整理してお伝えします。

先に結論をお伝えします。

見積のばらつきは「担当者の能力差」ではなく、「仕組みの差」で起きている。

見積が人によって違うと、「あの人は計算が甘い」「あの人は細かすぎる」と、つい個人の問題にしてしまいがちです。

でも、ばらつきの原因を一つひとつ分解していくと、そのほとんどは「ルールが決まっていないこと」に行き着きます。

そして、ばらつきは会社の利益を、誰にも気付かれないまま、静かに削っていきます。

積算や見積に関わる方、利益がなかなか残らないと感じている経営者の方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

少し長くなりますが、お付き合いください。

同じ家なのに、なぜ金額が違うのか

同じ家の模型を載せて傾いた天秤

まずは、よくある場面から考えてみます。

後輩
後輩

同じような30坪の平屋なのに、僕と先輩で見積が100万円以上違っていて…どっちが正しいんでしょう?

先輩
先輩

どっちが正しいかより、「どこで差がついているのか」を分解してみることが大事なんだよ。

見積の差を「合計金額」だけで比べても、原因はわかりません。

100万円の差があったとしても、その中身は、たくさんの小さな差の積み重ねです。

ある項目では単価が違い、ある項目では数量が違い、ある項目はそもそも片方にしか入っていない。

合計だけを見ていると、この「小さな差」が見えなくなってしまうんです。

しかも、見積が担当者によって違うと、社内でも「どの見積が正しいのか」を判断できません。

社長が最終チェックをしようにも、比べる基準がないんです。

結果として、「最後は社長の勘で決める」という状態になりがちです。

これでは、社長がいなければ見積が出せない会社になってしまいます。

だから僕は、見積を比較するときには、必ず項目ごとに突き合わせて、差額の内訳を分解するようにしています。

ワキログ
ワキログ

最近は、2つ以上の見積書を突き合わせて、差額の内訳を自動で洗い出す仕組みをAIでつくりました。人の目だと見落としがちな差も、機械的に全部拾えるので、とても重宝しています。

分解してみると、ばらつきの原因は、大きく5つのパターンに分けられることがわかってきました。

原因がわかれば、対策は驚くほどシンプルになります。

見積の比較は、「どちらが正しいか」を決めるためではなく、「どこでズレているか」を見つけるために行うものです。

次の章で、その5つを順番にご紹介します。

見積のばらつきを生む、5つのパターン

電卓や定規など5つのアイコンが入った小箱が並ぶ様子

見積の差額を分解していくと、ほとんどが次の5つのどれかに当てはまります。

  1. 単価差:同じ項目なのに、単価が違う
  2. 数量差:同じ項目なのに、数量が違う
  3. 計上漏れ:片方の見積にしか入っていない項目がある
  4. 0円未入力:項目はあるのに、金額が入っていない
  5. 計上工種の相違:同じ内容を、違う工種(項目)に入れている

順番に見ていきます。

①単価差

同じ材料、同じ工事なのに、人によって使っている単価が違うケースです。

古い単価表を使っていたり、仕入れ値が変わったことが共有されていなかったりすると、このズレが起きます。

例えば、単価が1,000円違うだけでも、数量が100あれば、それだけで10万円の差になります。

僕が見積を比較するときは、「単価差○円×数量○=○円」という形で、差額の理由を一行ずつ書き出すようにしています。

こうすると、どこでいくらの差が生まれているのかが一目でわかります。

例えば、こんなイメージです。

  • 単価差1,000円×数量120=120,000円
  • 数量差:単価5,000円×数量差8=40,000円
  • 計上漏れ:〇〇工事一式 150,000円

差額の理由が一行ずつ書き出されていると、「どちらが正しいか」を話し合うときにも、感情ではなく事実で話せるようになります。

②数量差

単価は同じでも、拾い出した数量が違うケースです。

図面から数量を拾うときの「ルール」が人によって違うと、同じ家でも数量が変わってしまいます。

ロスをどれくらい見込むか、どこまでを1つの単位として数えるか。こうした細かいルールの違いが、数量差を生みます。

数量差は、単価差に比べて気付きにくいのが厄介なところです。

単価は単価表と見比べればすぐにわかりますが、数量は図面から拾い直さないと、どちらが正しいのか判断できません。

だからこそ、「拾い方のルール」を先に揃えておくことが大切なんです。

③計上漏れ

片方の見積には入っているのに、もう片方には入っていない項目があるケースです。

これが一番怖いパターンです。

なぜなら、計上漏れは「見積が安くなる」方向に働くので、お客様からはむしろ喜ばれてしまうからです。

そして、漏れていた工事の費用は、最終的に会社の利益から出ていくことになります。

計上漏れが起きやすいのは、「毎回ではないけれど、ときどき必要になる工事」です。

いつも入れている項目は忘れませんが、たまにしか出てこない項目ほど、うっかり抜けてしまいます。

「うちの会社で漏れやすい項目リスト」をつくっておくだけでも、計上漏れはかなり防げます。

④0円未入力

項目の欄はあるのに、金額が0円のまま、あるいは空欄のままになっているケースです。

「あとで入れよう」と思っていたまま忘れてしまう。

計上漏れと同じく、気付かないまま契約してしまうと、利益を直接削ってしまいます。

⑤計上工種の相違

同じ内容の工事を、ある人は「内装工事」に、ある人は「雑工事」に入れている、というようなケースです。

合計金額は同じでも、項目の入れ方が違うので、見積同士を比べたときに、どこが同じでどこが違うのかがわからなくなってしまいます。

これは直接の損失にはなりにくいのですが、「比較できない」「振り返れない」という点で、大きな問題です。

過去の見積と比べられなければ、「前回の現場より、なぜ今回は高いのか」を説明することもできません。

振り返れない数字は、改善にもつながりません。

だからこそ、「どの工事を、どの項目に入れるか」も、会社のルールとして揃えておく必要があります。

ばらつきは、分解すれば「単価」「数量」「漏れ」「未入力」「入れ方」の5つに行き着く。

5つのパターンのうち、自分の会社ではどれが一番多いのか。

まずはそれを知ることから始めるだけでも、見積の精度は確実に上がっていきます。

ばらつきは、利益を「静かに」削っていく

家の模型の土台から金色のコインがこぼれ落ちる様子

ここまで見てきた5つのパターンのうち、特に怖いのが計上漏れと0円未入力です。

この2つは、ミスがあっても見積が「安く」なるだけなので、誰も困らないように見えます。

後輩
後輩

見積が安くなるなら、お客様にとってはむしろいいことじゃないですか?

先輩
先輩

その分の費用は消えるわけじゃないからね。最後は必ず、会社の利益から払うことになるんだよ。

見積から漏れた工事も、実際の現場では必ず発生します。

そして、その費用は、契約金額には含まれていないので、会社がかぶることになります。

しかも、この損失は「目に見える赤字」として表れるのではなく、「なんとなく利益が残らない」という形で表れます。

一棟あたりの漏れは、数万円から数十万円かもしれません。

でも、それが年間の棟数分積み重なると、会社の利益に大きな穴があいてしまうんです。

例えば、1棟あたり20万円の漏れがあったとして、年間30棟を建てていれば、それだけで600万円になります。

会社によっては、利益のかなりの部分がまるごと消えてしまうくらいの金額です。

「売上は伸びているのに、なぜか利益が残らない」。

そんな悩みを抱えている工務店さんは、一度、見積の「ばらつき」を疑ってみてください。

もうひとつ、ばらつきには見過ごせない問題があります。

それは、お客様からの信頼です。

同じような家なのに、担当者によって金額が大きく違えば、お客様は「この会社の見積は信用できるのかな」と感じてしまいます。

見積の精度は、そのまま会社の信頼につながっているんです。

ばらつきは、社員も疲れさせる

見積のばらつきが生むのは、お金の問題だけではありません。

計上漏れが見つかるたびに、現場と営業の間で「なんで入っていないの?」というやりとりが起きます。

追加費用をお客様にお願いするのか、会社で吸収するのか。

そのたびに誰かが謝り、誰かが調整に走り回ることになります。

見積の精度が低い会社ほど、こうした「後始末」の仕事に、多くの時間とエネルギーを奪われているんです。

逆に言えば、見積の精度を上げることは、社員が本来の仕事に集中できる環境をつくることでもあります。

ばらつきを減らす「仕組み」のつくり方

チェックリストと電卓を前に同じ規格の積み木を揃えるビジネスパーソン

では、どうすれば見積のばらつきを減らせるのでしょうか。

大切なのは、「気を付けよう」という心がけではなく、「ばらつかない仕組み」をつくることです。

工務店さんにおすすめしている取り組みを、3つにまとめます。

  1. 単価表をひとつにして、更新のルールを決める
  2. 数量を拾うときのルールを言葉にする
  3. 見積を出す前に、「漏れ」と「0円」をチェックする

①単価表をひとつにして、更新のルールを決める

担当者ごとに違う単価表を使っていたら、単価差がなくなることはありません。

会社として「正」とする単価表をひとつに決め、誰が、いつ、どのタイミングで更新するのかをルールにします。

特に、材料費の値上がりが続く時期は、単価表の更新が追いつかないことがよくあります。

「仕入れ値が変わったら、その週のうちに単価表を更新する」のように、具体的なタイミングまで決めておくと安心です。

②数量を拾うときのルールを言葉にする

ロスの見込み方や、数量の数え方など、ベテランの頭の中にしかないルールを、言葉にして書き出します。

積算が特定の一人に集中している会社ほど、このマニュアル化が大切です。

マニュアル化を進めるときは、いきなり分厚いマニュアルをつくろうとしないことがポイントです。

  • ベテランが積算するときに、横で「なぜそうしたのか」を聞き取る
  • 判断の理由を、一つずつ短い言葉で書き出す
  • よく迷う項目から順番に、ルールとして整理していく

完璧なマニュアルを最初からつくるのではなく、「迷いやすいところ」から少しずつ言葉にしていく。

このほうが、ずっと早く、現場で使えるマニュアルになります。

その人がいないと見積が出せない状態は、会社にとって大きなリスクだからです。

その人が体調を崩したり、退職したりした瞬間に、会社の見積業務が止まってしまいます。

積算の仕組み化は、利益を守るだけでなく、会社を守ることにもつながるんです。

実際に僕も、積算の業務が一人に集中している工務店さんと一緒に、積算業務のマニュアル化に取り組んでいます。

③見積を出す前に、「漏れ」と「0円」をチェックする

過去の見積と項目を突き合わせて、「いつもは入っている項目が入っていない」「金額が0円のままの項目がある」を確認します。

この最後のチェックがあるだけで、計上漏れと0円未入力の多くは防ぐことができます。

チェックは、見積をつくった本人ではなく、別の人が行うのが理想です。

自分がつくったものの間違いは、自分ではなかなか気付けないからです。

人手が足りない場合は、過去の見積との突き合わせをAIに任せるのもひとつの方法です。

今は、こうした突き合わせ作業をAIに手伝ってもらうこともできます。

人は判断に集中し、機械的なチェックは仕組みに任せる。

これが、これからの積算の理想の形だと思っています。

AIは、たくさんの項目を突き合わせたり、漏れを探したりする作業が得意です。

一方で、「この家には、この工事が必要か」「この単価で本当に大丈夫か」といった判断は、経験のある人にしかできません。

機械が得意なことは機械に任せ、人は人にしかできない判断に時間を使う。

この役割分担ができると、積算の担当者の負担は大きく減っていきます。

今日からできるセルフチェック

  • 社内で使っている単価表は、ひとつに統一されているか
  • 数量を拾うルールは、言葉になっているか
  • 見積を出す前に、「漏れ」と「0円」を確認する工程があるか

ひとつでも「いいえ」があれば、そこが利益を守るための最初の一歩です。

まとめ:見積の精度は、利益と信頼の土台

整然と揃った家の模型の列の前に立つビジネスパーソン

今回お伝えしたかったことは、この2つです。

  1. 見積のばらつきは、「単価」「数量」「漏れ」「未入力」「入れ方」の5つに分解できる
  2. ばらつきは個人の問題ではなく、仕組みで減らすもの

見積は、家づくりのすべての出発点です。

そして、見積の精度は、そのまま会社の利益と、お客様からの信頼の土台になります。

派手な集客施策に比べると、積算や見積の見直しは、地味な取り組みに見えるかもしれません。

でも、利益を確実に残せる会社は、例外なくこうした「地味な仕組み」を大切にしています。

集客にどれだけお金をかけても、見積で利益が漏れていたら、穴のあいたバケツに水を注ぐようなものです。

まずはバケツの穴をふさぐ。

それが、利益を残す会社づくりの第一歩だと思います。

見積を見直すことは、お客様への誠実さを見直すことでもあります。

正確な見積は、お客様が安心して家づくりを進めるための、最初の約束だからです。

ワキログ
ワキログ

最後に、ひとつだけ。

見積の差を分解してみると、「誰かが間違えていた」ではなく、「ルールが決まっていなかった」という結論になることがほとんどです。

だからこそ、犯人探しではなく、仕組みづくりに目を向けてみてください。

ルールが決まれば、担当者は迷わずに見積をつくれるようになり、会社には利益が残り、お客様には安心が届きます。

地味だけれど、確実に会社を強くする取り組みです。

ワキログでした!

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