新聞の5割割れに学ぶ「プロダクト・ライフサイクル」|衰退は設計の始まり

新聞の5割割れに学ぶ「プロダクト・ライフサイクル」|ワキログ 工務店の方へ
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ワキログ
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お疲れ様です。ワキログです。

僕は普段、全国の工務店さんの経営コンサルティングをしています。

ニュースを入口にして経営学の言葉を一つずつ解説する「ニュースで学ぶ経営学」、今回が第7回です。

テーマは「新聞の購読率、初めて5割割れ」です。

日本で一番「家にあったもの」が、18年で半分になりました。

新聞です。

2008年には、10人に9人が自宅で新聞を取っていました。今は、2人に1人を切りました。

「新聞、終わったな」で済ませるのは簡単です。

でも経営学で見ると、ここからの打ち手が一番おもしろい。

だって、業界全体が沈む中で、購読率が「上がった」新聞もあるんですから。

衰退は終わりではなく、設計の始まりです。

今日は、このニュースを入口に、経営学の「プロダクト・ライフサイクル」という言葉を解説します。

少し長くなりますが、お付き合いください。

新聞の購読率が、初めて5割を切った

新聞の月ぎめ購読率の推移|2008年度88.6%から2026年度49.8%へ、初めて5割を下回る

まずは事実から整理します。

2026年10月10日、公益財団法人の新聞通信調査会が「第19回メディアに関する全国世論調査」を発表しました。

全国の18歳以上5,000人を訪問して聞いた調査で、回答は2,676人です。

自宅で月ぎめで新聞を取っている人の割合、いわゆる購読率が49.8%でした。

前年の50.1%からは、わずか0.3ポイントの低下です。

ただ、2008年度の調査開始以来、初めて5割を下回りました。

2008年度は88.6%でしたから、18年で約39ポイント落ちた計算になります。

紙の種類別の購読率比較|全国紙は減少、県紙・地方紙は0.7ポイント増

中身を見ると、全国紙は21.4%で前年から1.5ポイント減。

ところが県紙・地方紙は21.2%で、逆に0.7ポイント増えています。

全体が沈む中で、地方紙だけ持ち直している。ここは、あとで効いてきます。

部数で見ても同じです。

日本新聞協会の調べで、発行部数のピークは1997年の約5,377万部。それが2025年10月には約2,487万部です。

1世帯あたりで言うと、1.18部から0.42部。半分以下になりました。

年代差はもっと極端です。

総務省の別の調査で、平日に新聞を読む人の割合は70代で49.5%、60代で38.9%。

でも30代は3.0%、20代は1.6%です。

新聞を取らない理由のトップは「テレビやインターネットなど他の情報で十分だから」で74%。

「これからも紙の新聞を購読する」と答えた人は40.2%。2018年度は58.5%でしたから、8年で18ポイント減っています。

ここまでが事実です。

自信なし
自信なし

うちの新築も、昔に比べたら問い合わせが半分くらいになっていて・・・。

新聞と同じで、もう終わりに向かっているんじゃないかと不安なんです。

自信あり
自信あり

数字が落ちていることと、商売が終わることは、別の話ですよ。

「今どの段階にいるか」が分かれば、打ち手は変わります。

「減っている」という事実と、「終わり」という判断は、分けて考える必要があります。

この整理に使えるのが、経営学の「プロダクト・ライフサイクル」という考え方です。

プロダクト・ライフサイクルとは、商品にも寿命があるという考え方

プロダクト・ライフサイクルの基本曲線|導入期・成長期・成熟期・衰退期と売上・利益の動き

略してPLC(経営学の用語)。日本語では製品ライフサイクルとも言います。

一言でいうと、「商品にも寿命があって、生まれて、育って、落ち着いて、衰える」という考え方です。

人の一生と同じで、段階ごとに正しい打ち手が変わります。

原型は1950年のジョエル・ディーンと言われ、世界に広めたのがハーバードのセオドア・レビットです。

1965年の論文のタイトルは「製品ライフサイクルを活用せよ」。

「みんな知っているのに、誰も使っていない」から「活用せよ」。このタイトルが、いいんですよね。

横軸に時間、縦軸に売上を取ります。

すると売上はゆっくり立ち上がって、急に伸びて、頭打ちになって、落ちていく。

導入期、成長期、成熟期、衰退期。この4つに分けます。

ここで見てほしいのが、図の赤い点線の「利益」です。

導入期は開発費と宣伝費で赤字。

利益のピークは成長期の終わりごろ。つまり、売上のピークより先に利益のピークが来ます。

「売上はまだ伸びているのに、なぜか儲からない」という時期は、もう成熟期に入っているサインです。

段階ごとに、競合の数も、やるべきことも変わります。

  • 導入期は、認知を取る
  • 成長期は、シェアを取る
  • 成熟期は、効率とシェアの維持
  • 衰退期は、投資を絞って、残ってくれる顧客を守る

たとえるなら、ラーメン屋さんです。

開店直後はチラシを配って知ってもらう。行列ができたら席を増やして取りこぼさない。

周りに競合が増えたら、原価を締めて常連さんを大事にする。

街から人が減ってきたら、店舗を絞って、残ったお客さんのために続ける。

同じ商品でも、時期によって「正解」が違う。これがPLCの肝です。

衰退期の4つの戦略|リーダーシップ・ニッチ・収穫・撤退(ハリガン=ポーター)

ここから一段深くいきます。今日の本題は「衰退期」です。

1983年、ハリガンとマイケル・ポーターが「衰退産業の終盤戦略」という論文を書きました。

縦軸は「業界の衰退がゆるやかで、残る需要があるか」。横軸は「自社に強みがあるか」。

この組み合わせで、戦略は4つに分かれます。

  • リーダーシップ:競合が抜けた後の需要を取りにいく
  • ニッチ:小さくても「ここは代わりがない」という領域を守る
  • 収穫:新しい投資をやめて、残りの利益を回収する
  • 撤退:価値があるうちに早く売る、やめる

そして、一番伝えたいのがこれです。衰退は「終わり」ではありません。

レビットは論文で、ナイロンの例を出しています。

ストッキングの需要が頭打ちになったとき、デュポンは「もっと頻繁に」「もっと多様に」「新しいユーザーに」「新しい用途に」の4つで寿命を延ばしました。

整理すると、用途開発、新市場、リポジショニング。この3つで延命は設計できます。

しかもレビットは「延命の計画は、発売前から立てておけ」とまで言っています。

ただし、PLCには有名な批判もあります。

1976年のダラとユスペ、論文のタイトルがそのまま「製品ライフサイクル概念は忘れろ!」です。

一つ目の落とし穴が、自己成就的予言。「もう衰退期だ」と決めて投資を止めたら、本当に衰退します。

二つ目、段階の判定が難しい。今が成熟期なのか衰退期なのか、渦中にいる人には分かりません。

三つ目、製品と、製品カテゴリーと、ブランドでは、サイクルの長さが違います。

「紙の新聞」という製品は衰退期でも、「ニュース」というカテゴリーは衰退していないのです。

ワキログ
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PLCは便利な地図ですが、地図を見て「ここは行き止まりだ」と決めつけた瞬間に、本当に行き止まりになる。

使い方を間違えると、自分で自分の会社を衰退させてしまう。ここは覚えておいてください。

新聞は「終わり」ではなく、延命を設計している

新聞業界をプロダクト・ライフサイクルに当てはめた図|紙は衰退期、デジタルは成長期

では、新聞に当てはめます。ここからは僕の見立てです。

紙の新聞という「製品」は衰退期。これは数字が示しています。

でも「ニュース」という製品カテゴリーは、衰退していません。

同じ調査で、インターネットでニュースに触れる人は74.4%。

需要は消えていない。器が変わっただけです。

だから新聞社がやっているのは、「新市場」への延命です。

日経は2010年3月に電子版を始めて、2024年12月に有料会員が101万人になりました。

ニューヨーク・タイムズは2026年6月末時点で購読者1,335万人。そのうちデジタルのみが1,280万人で、紙は55万人です。

紙の衰退期と、デジタルの成長期を、同じ会社の中で同時に走らせている。

もう一つ注目したいのが、地方紙です。

全体が下がる中で、県紙・地方紙の購読率は0.7ポイント上がりました。

全国ニュースはネットで十分。でも、地元の情報は地元紙にしかない。

これがハリガン=ポーターの言う「ニッチ」です。

衰退期の勝ち方は、大きくなることではなく、「ここだけは代わりがない」を持つことです。

自信なし
自信なし

地方紙が持ち直したって言っても、0.7ポイントですよね。

それで「勝ち方」と言えるんですか・・・。

自信あり
自信あり

業界全体が18年で39ポイント落ちている中での「プラス」ですからね。

衰退期では、売上を伸ばすことより「残る側に回る」ことの方が大きいんです。

一方で、気になる数字もあります。

情報の信頼度は100点満点で、新聞が64.6点、インターネットが46.9点。

信頼は残っている。でも「読む習慣」の方が先に崩れている。

新聞を取っている理由のトップが「習慣だから」の47%ですからね。

信頼という資産を、習慣に頼らない形でどう売り直すか。ここがリポジショニングの勝負だと、僕は見ています。

もう一つだけ。ネットで読んでいるニュースも、元をたどると新聞社の記事が起点になっているものが多いそうです。

つまり「ニュースをつくる力」は衰退期ではなく、むしろ希少になっている。

ここをどう収益に変えるかが、次の設計です。

衰退期は、縮む市場の中で「代わりがない場所」を選び直す時期です。

じゃあ、どうする?自分の商売に当てはめる

工務店の商品を段階にマッピングした例|新築注文住宅・性能向上リノベ・空き家活用

で、自分の商売にどう使うか。

工務店さんなら、注文住宅・リフォーム・分譲、それぞれ今どの段階ですか。

新設住宅着工戸数の長期推移|1973年191万戸のピークから2025年74万戸へ

新築着工は1973年の約191万戸がピークで、2025年は約74万戸。

2025年度で見ると71.1万戸、前年度比で12.9%減です。

「新築=衰退期」と決めつけるのは早い。地域によっても全然違います。

でも「成長期の戦い方」、つまり広告を増やして数を追う戦い方を続けていたら、負けます。

成熟期の勝ち方はシェアと効率。衰退期の勝ち方はニッチと収穫。

そして次の成長期の商品を、今のうちに仕込む。

たとえば中古住宅を買ってリノベする、空き家を直して貸す、性能向上リフォーム。

新築が成熟期なら、その横で成長期に入っている商品が、必ずあります。

立場別に、アクションを整理しておきます。

①経営者なら

主力商品の売上と利益を、別々のグラフにしてみてください。

売上が伸びているのに利益が減り始めていたら、それは成熟期のサインです。

そのうえで、自社の「ニッチ」を言葉にする。

②会社員なら

自分の仕事やスキルにも、ライフサイクルはあります。

今の仕事が成熟期なら、延命の3つ、用途開発・新市場・リポジショニングを自分に当てはめてみる。

同じスキルを、別の部署や別の顧客に使えないか。これだけで次の成長期は作れます。

③生活者なら

「古いから終わり」と思っていたものの中に、ニッチとして残り続けるものがあります。

地元紙、町の本屋、商店街。残っている理由を考えると、商売の見方が変わります。

【診断士試験ならこう出る】

僕は中小企業診断士でもあるので、少しだけ試験の話をさせてください。

中小企業診断士の試験でも、PLCは常連です。

令和4年度の企業経営理論 第33問で、「製品ライフサイクルに関する記述として、最も適切なものはどれか」という問題が出ています。

正解は、「衰退期の顧客は一般にロイヤルティが高いので、事業を維持すれば売上は小さくても高い利益率を実現できる可能性が残る」という選択肢でした。

まさに今日の地方紙の話です。

引っかけは「成長期に新しい利用シーンを提案する」という選択肢。これは成熟期の打ち手なので誤りです。

せっかくなので、新聞版の予想問題を1問。

紙の新聞の購読率が初めて5割を下回った。製品ライフサイクル(PLC)に関する記述として最も適切なものはどれか。

  • ア 衰退期は残った顧客への投資を増やし、市場全体の需要回復を狙うのが合理的である
  • イ 自社に強みがなく衰退が急な業界では、「収穫」か「撤退」が選択肢になる
  • ウ 製品カテゴリーが衰退期に入れば、その中の個別ブランドも必ず同時に衰退する
  • エ 段階判定は客観的に確定できるので、「衰退期」と判断したら投資を止めるのが定石だ

正解は、イです。

アは逆。衰退期は投資を絞るのが基本で、市場全体の回復を一社で狙うのは筋が悪い。

ウは違う。カテゴリーとブランドのサイクルは別物です。紙は衰退でも、地方紙というブランドは持ち直しています。

エは自己成就的予言そのもの。段階は客観的に確定できないし、決めつけて止めたら本当に終わります。

試験に出るということは、それだけ長く使われてきた、経営の基礎になる考え方だということです。

ワキログ
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試験の話はここまで。ここからが本題です。

自分の商売について、この3つを一度、聞いてみてください。

【セルフチェック】

  1. うちの主力商品は、今どの段階にいますか?
  2. うちの「ニッチ」、ここだけは代わりがないと言える領域は何ですか?
  3. 次の成長期の商品を、もう仕込んでいますか?

3つとも答えられたら、衰退期は怖くありません。

答えられないなら、まず自社を点検する物差しを持つところからです。

まとめ:衰退は終わりではなく、設計の始まり

持ち帰りの3つの問い|主力商品の段階・自社のニッチ・次の成長期の商品

今日の経営学用語は「プロダクト・ライフサイクル」でした。

  1. 商品にも寿命があり、導入期・成長期・成熟期・衰退期で正しい打ち手が変わる
  2. 新聞は、紙は衰退期。でもデジタルという新市場と、地元というニッチの二つの道で、生き残りを設計している

衰退期に入ることと、会社が終わることは、別です。

衰退を「終わり」にしてしまうのは、市場ではなく、「もう衰退期だ」と決めて手を止める経営者の側なのかもしれません。

一方で、成長期の戦い方のまま数を追い続けるのも、同じくらい危ない。

自分の商品が今どこにいるかを見極めて、その段階に合った打ち手に切り替える。

どれも、明日から工務店の現場でできることです。

ワキログ
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僕が顧問先の工務店さんとお話ししていると、「新築が減っているけど、どう動けばいいか分からない」という相談が増えています。

そのとき僕が一番気をつけているのは、「衰退期ですね」と決めつけないことです。

同じ新築でも、地域と客層が変われば段階は変わる。自社の数字で判定するしかありません。

僕は顧問先で「工務店経営の14ヶ条」という物差しを使っていますが、大事なのは物差しそのものより、定期的に自社を点検する習慣だと思っています。

向き合えば、可能性は必ず現実にできる。衰退期にだって、代わりのない場所は作れます。

このシリーズでは、ニュースを入口に経営学の言葉を一つずつ解説していきます。

次回も別のニュースから、経営学の言葉を一つ、たのしく解説します。

ワキログでした!

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